電子書籍と著作権(自炊代行・自炊カフェ問題)

    電子書籍と著作権(自炊代行・自炊カフェ問題)

    1.電子書籍の著作権処理
    一般に著作者から許可を得て出版をする場合、出版業者は出版権の設定を受けます。出版権とは簡単に言うと「原作のまま複製して頒布すること」です(著作権法80条)。出版権の設定を受けた出版業者は出版権を専有するため、著作権者は当該著作物については他の出版業者に出版権を設定したり、自分で出版したりする(つまり頒布する)ことはできなくなります。

    電子書籍化をすると、こうした出版権と同様に考えがちですが、電子書籍の場合にはさらにそれ以上の権利処理を行っています。具体的には、まず電子出版は複製下上で送信可能化することになりますので、出版権でカバーされる複製頒布権と併せて送信可能化権を設定します。また、原作に改変をする場合があるときは、挿入する画像や音声がある場合には翻訳権の設定を受け、さらに原作を改変する場合には著作者人格権に対する承諾が必要になります。
    なお、これらの設定についての一般的ひな型は日本書籍出版協会のウェブサイトに定型契約書が置かれています。


    2.自炊代行・自炊カフェ
    自炊代行については、一時訴訟沙汰になりましたが、平成24年までに裁判自体は終結しました。ただ、判例上の決着はまだ見ていません。問題点は出版のような複製ということを代行業者が行っているかです。前提として、本を買った当人がコピーをするには頒布しなければ適法ですが、著作者は本人以外のものが複製することまで認めていないので(購入者は著作者のそうした許可を前提にして本を買っているということ)、それを代行する代行業者は本を買った人ではない以上違法ではないか、ということです。

    この問題の結論は代行業者がどの程度まで作業を手伝っているか、という個々のケース判断ですが、業者が全くタッチしない自炊カフェであれば一般に適法だとされています。他方、自炊代行は業者の手にかかるため違法だと一般に評価されています。

    ただ、この区分けは正確には他の議論と整合しません。
    つまり、自炊カフェは予め裁断してあるものを自分でコピーしているから適法だとしても、裁断からコピー機の用意まで全て業者が手配していて、利用者はスキャナに通すだけです。その意味で利用者の複製は実質は全て業者がやっていて、代行との区別は人の手を借りているかどうかの違いです。他方、クラウドにおいてMYUTA事件では複雑な作業をサーバが行っているから複製をクラウド側が行っていると評価されているのですが、クラウドはもとより人の手などなくプログラムで動かしていますから、自炊の議論を当てはめると当然適法ではないか、ということになり、これらの一般的議論の整合性に今ひとつ疑問があります。

    複製については結局実質判断になるのですが、自炊の問題とクラウドの問題は同じ性質ですから、これらで結論が齟齬するというのは結局情報世界を物理世界と同じように捉えられていないように思われ、今後整理が必要ではないかと思います。

    ちなみに業者の手で複雑な作業をしないということでいいのであれば、例えば複数の業者が作業を分担し、相互に関連がないという建前を取られた場合には別の解釈があり得るでしょう。例えば、パチンコにおいてパチンコ屋と換金屋は別の業者だということで換金が合法になるわけですが、それと同じ事がなされれば、自炊代行の違法性がクリアされてしまうということになり、多少の違和感を覚えます。

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    カテゴリ:Ⅲ 著作権等知財及び名誉権     

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