ビックデータの利用とプライバシー権侵害の判断基準

    ビックデータの利用とプライバシー権侵害の判断基準

    ビックデータの利用についてプライバシー保護の取り組みが話題になっています。ビックデータで利用されるデータのうちプライバシー等の侵害が違法性を有すると判断されるデータ部分の吸出し・除去作業が求められますが、その前提としていかなる場合に違法性を有するデータになるかが問題です。

    アメリカのネット系プラットフォーム事業者による利用者の行動履歴等各種情報の活用は、主要国においてプライバシー保護との関係で諸問題を発生させていますが、とりわけ日本では主要諸外国と比較してプライバシーについては敏感な国民性があり、判例もプライバシーを憲法上の権利として重く捉えていますので、ビックデータの扱いにはプライバシーの観点から違法の指摘を受けないように処理する必要がある、ということになります。

    このビックデータ活用にあたってのプライバシー処理のステップは大別すると2つです。

    ①当該ビックデータにプライバシーが含まれるかどうか

    プライバシー侵害の有無を判断するには、当該情報から特定の個人が判別されるかどうか、が基準になるでしょう。例えば、パソコンやスマホのクッキー情報から当該パソコンの利用者の買い物傾向、趣味、嗜好などが判別されたとしても、クッキー情報だけでは特定個人の判別はできませんので、クッキー情報の利用はプライバシー侵害になりません。
    他方、公道の自動車の運行情報をビックデータとして渋滞情報の解析に利用する場合、自動車のナンバー自体にプライバシー侵害があり得るところです。また、公道上の監視カメラの歩行者の状況を解析したデータを用いる場合、プライバシー侵害になります。

    ②プライバシー侵害が違法か否か

    アメリカではネット系プラットフォーム事業者による利用者の行動履歴等各種情報はテロ対策として、そのプライバシーは大幅に制限されるべきだという主張があります。日本においても、警察の行っている監視カメラについてはプライバシー侵害はあるけれども、判例上一定の要件のもとに合法とされています(京都府学連事件等)。つまり仮にプライバシー侵害があったとしても、一定の要件があれば必ずしも違法にはなりません。

    それではどのようなケースで、プライバシー侵害を含むビックデータの活用が違法になるでしょうか。

    この点の参考となる判例としては、私人による監視カメラの合法性を判断した札幌高裁昭和52年2月23日判決があります。この判決では、「①その写真撮影の目的が,正当な報道のための取材,正当な労務対策のための証拠保全,訴訟等により法律上の権利を行使するための証拠保全など,社会通念上是認される正当なものであって,②写真撮影の必要性及び緊急性があり,③かつその撮影が一般的に許容される限度を超えない相当な方法をもって行われるとき」に許容されるとしています。

    適用基準としてはかなりあいまいな判断ですが、要するに正当な目的(公益性)が求められるとともに,②プライバシー侵害の程度と得られる利益との厳密な比較衡量が求められている、と理解されます。

    それ以上の判断については事案ごとの評価になるでしょう。実際にプライバシー侵害が違法ではない、と判断するには一定のリーガルリスクは避けられませんが、できるだけ専門家による慎重な判断が求められるところです。
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    カテゴリ:Ⅲ 著作権等知財及び名誉権     

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