忘れられる権利

    忘れられる権利の概要はウィキに掲載があるため、ここでは国際背景と日本の現状について解説します。

    ■国際背景
    個人情報の管理の必要性が主にEUを中心として発展してきた。ドイツでグーグルのストリートビューについて違法に情報を収集したとして罰金を課された事案、スノーデン事件などを契機に、EU圏では、サイバー空間の「米国一極支配」にあからさまなアレルギー反応を示し、グーグルは自分たちのプライバシーを食い物にしているという被害意識が強まっている。
    こうした中、2013年10月、EU個人データ保護規則案を可決。これまで加盟国への強制力のないEU個人データ保護指令を加盟国に置いて即時に効力を有する「規則」に格上げすることで、EU全体のばらつきの解消を図ろうとしている。規則としての制定は2014年中を予定していたが、英国の都合により2015年中の規則制定を目指している。その規則において、忘れられる権利は消去権として明示された。
    これによれば、一定の要件を満たせば、管理者に対して個人データの消去と情報の流通回避措置を実行させることができ、これに違反した管理者に対しては、その行政罰として、最大1億ユーロまたは全世界ベース売上高の5%のうち、高い方を上限とする罰金とすることなどが規定されている。

    ■日本の状況
    (1)サジェスト機能の名誉棄損
    グーグルのサジェスト機能でのネガティブな単語が名誉棄損に該当するかが争われた事案で、東京高裁(H26.1.15判決)は、人格権侵害は認めたものの、名誉棄損やプライバシー侵害は認めなかった。理由として、サジェスト機能で表示された単語だけでは名誉棄損に該当する事実が表示されないことや、プライバシー侵害を認めるほどの情報がないことなどがある。
    なおこの裁判においてグーグルに差し止め請求を認める仮処分命令が発令されたが、グーグル米国本社はこれに従わbなかった。(ただし、後述(3)の事例では米国グーグルが日本の裁判所の命令に従っている。)
    (2)検索結果でのスニペット部分の名誉棄損
    京都地裁(H26.8.7判決)は、スニペット部分は自動的かつ機械的に抜粋して表示しているだけであり、事実の摘示を行っていないとして名誉棄損の成立を否定した。しかし、この判決については、欧州での消去権成立までに至った一連の司法判断とは乖離が著しいと批判されている。
    (3)被告はグーグルの米国本社か日本法人か
    京都地裁H26.9.17判決は、グーグル日本法人はサイトの管理運営の主体ではないと判断、その後東京地裁で人格権侵害を理由とした、米国グーグルに対する差し止めの仮処分発令(H26.10.9)に対して、米国グーグルは一部削除に応じることとなった。

    コメント
    従前、日本の裁判所に米国グーグルは必ずしも従わないという方針であったが、一部削除に応じるようになったことは、前記欧州での事案等を踏まえた国際的潮流と思われる。ただ、今後その流れが加速するかは不透明である。

    まとめ
    今後グーグルの検索結果等の削除を求める場合、被告は米国グーグルであり、その執行可能性は不透明であるものの、可能性はゼロではなくなった。また、仮処分命令の被保全権利は名誉権ではなく、人格権を理由にすることが順当な構成と考えられる。




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    カテゴリ:Ⅲ 著作権等知財及び名誉権