ドローンを飛行させる際の法的留意点

    国交省での航空法上の飛行許可があって、かつ、飛行禁止区域(高度含む)を除くことを前提にした場合の法的な問題点を整理しておきます。
    まず最初に簡単に触れておきたいと思いますが、仮に事故による墜落によって、具体的な損傷を与えた場合には、言うまでもなく、刑事上は器物損壊罪、過失致傷罪、また、民事上の損害賠償責任が生じることはいうまでもありません。そうではなく、単に飛行させる場合に、どのような問題点があるかを整理しておきたいと思います。

    ■対私人に関する問題1~プライバシー等
    私有地の上空には、基本的に土地地権者の権利は及んではおりません。そのため、当然には上空のドローンは排除できないと考えられます。ただし、プライバシー、暴行、及び営業権の問題が絡みます。このうち、暴行とは、有形力の行使という定義で、必ずしも身体に触れる必要がありません。そのため、ドローンが相当なスピードで人に近付いた場合、プライバシー侵害のみならず、暴行罪の適用もあり得ることになります。人が建物の中に居る場合には、暴行罪が成立しなくても、近づいて飛行すると、プライバシー侵害があり得るでしょう。また、営業権については、賃貸ビルのオーナーは、美的外観を保持することについて一定の営業上の利益を有すると考えられることから、多数のドローンが飛行するようになると、賃貸ビルオーナーに対する営業妨害ということが考えられます。

    ■対私人に関する問題2~撃墜・捕獲と正当防衛(最も注意すべき事項)
    上記のような法的な問題と共に、実際にドローンが私有地に入った場合に、ドローンが追撃されたり、捕獲されたりするというリスクがあるでしょう。このようなドローンの捕獲行為は原則として、自力救済に該当し違法となるわけですが、プライバシーを守るための手段として正当防衛に該当する可能性があり、撃墜・捕獲されるような飛行形態ですと、通例建物などに近付いていると考えられますので、正当防衛になる可能性はそれなりに高いと見られます。典型的な撃墜・捕獲行為としては、電波妨害があると思います。
    こうした捕獲撃墜が正当防衛とみなされると、その捕獲撃墜行為によって事故が生じることが相当に懸念され、これによって物や人に当たった場合の各種の刑事罰や損害賠償を受ける不利益は、残念ですがドローン所有者が負担します。あるいは後述のように公道に落ちた場合には道交法違反にもなるでしょう。そうしたリスクは、実用面で最も懸念されるかもしれません。そのため、このような捕獲追撃行為を受ける状況(建物に近付くなどの飛行)を回避する飛行を心掛ける必要があるでしょう。
    また、捕獲撃墜が仮に正当防衛に該当しない場合、墜落した場合の他社への損害は、捕獲行為を行ったものとドローンの所有者とで、その落ち度の割合によって共同して賠償ないし責任負担するということになると考えられますので、正当防衛に該当しない場合(捕獲が違法)でも、リスクがないというわけではありません。


    ■公共場所に関する法的な問題点

    (1)公的な場所1~道路
    まず道交法に言う、「車」にドローンが含まれるか、という議論がありますが、私見では刑事罰を伴う道交法の定義として、空中の飛行物であるドローンが「車」に含まれるというのは刑法上禁止される拡大解釈に該当すると考えられますので、道交法上の規制は直ちには適用されないでしょう。
    ただし、道交法では、道路交通の安全を図るため「石,ガラスびん,金属片その他道路上の人若しくは車両等を損傷するおそれのある物件を投げ,又は発射すること」が禁止されており(同法76条4項4号)、物件を発射すること、に該当すると考えられます。
    そのため、これをクリアするには、警察署で道路使用許可を得る必要があることになりますが、一般に許可のハードルは公共性を要するため相当に困難でしょう。
    ただ、相当な上空であれば、道路交通の安全を害するとは言えないため、あくまで低空で飛行させた場合に限定されることになるでしょう。とはいえ、落下の危険を考慮すると、どの程度の高度であれば良いか、は一概には判断できず、まだ公的な見解も示されてはいない状況にあります。
    正当防衛については上記で述べましたが、、特に、プライバシー等の理由で第三者から空中でドローンが落下させられた場合、撃墜が正当防衛になるとすると(あるいは完全な正当防衛にならないとしても)、ドローンの道路への落下によって、道交法違反に該当することになるでしょう。ドローン自体が安全でも、撃墜させられる可能性があることは、道交法違反等との関係でも相当な注意が必要です。

    (2)公的な場所2~線路
    線路の安全を図る必要性は、公共安全ルールの中でもとりわけ厚く法的な保護が与えられています。具体的には、特例法が色々ありますが、一般的に共通する犯罪として、往来危険罪というのものがあり、刑法125条では「鉄道若しくはその標識を損壊し、又はその他の方法により、汽車又は電車の往来の危険を生じさせた者は、二年以上の有期懲役に処する。」とあり、最高刑が20年と相当な重罪です。また、同罪は未遂罪が規定されていることから、電車の線路付近でドローンを飛行させると、この未遂罪の適用のために警察が積極的に動く可能性は高いと思いますので、線路付近は避けるように十分な注意が必要です。なお、新幹線については特に重罰が設けられています(新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法)。

    (3)公的な場所3~河川
    河川の水上管理は、河川法に基づき国交省の地方整備局管轄の各河川事務所が担当しており、実務上の扱いとしては、概ね東京都であれば、ドローンは原則禁止となっていて、例外として、測量や撮影等の際に一時利用届を提出させているか、又は荒川のように水面利用ルールに基づいて規制している例があります。河川法の法律の建付けとしては、本来水面上の利用は自由ではありますが、河川法28条及び同施行令16条の2の適用によって、各河川及び自治体や河川事務所毎に規制が可能となっています。そのため、河川上をドローンで飛行させる場合には、事前に各河川事務所(及びその出張所)に確認する必要があるでしょう。

    関連記事
    カテゴリ:Ⅸ ドローン(ロボット、AI)